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学芸員資格保有者おすすめの歴史博物館10選

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はじめに

古代史が好きで自ら学んであれこれと考える私たちにとって、全国各地にある歴史系の博物館は大変ありがたい存在ですね。

本を読んだり講演会やセミナーに参加したりすることで知識を吸収するだけでなく、出土物などを自分の眼で観ることは文字や写真とは比較にならないリアリティと説得力があります。

ここでは学芸員資格を持つ私(ひろ)がこれまでに見学した博物館の中でも特にお勧めしたいところをいくつか紹介したいと思います。

 

①静岡市立登呂博物館

登呂博物館

静岡市立登呂博物館は弥生遺跡の代表格、静岡県の登呂遺跡を学ぶための博物館です。

登呂遺跡は日本で初めて弥生時代の水田跡が発見された遺跡で、大量の土器や木製品が出土するとともに、住居跡や倉庫跡なども見つかりました。

常設展示室にはそんな土器や木製品がたくさん展示されているのですが、展示室内は美しい色使いや照明効果も手伝って、まるで図鑑のページを次々とめくっていくような感覚で展示を見学することができます。

その展示資料のほとんどが実際に弥生時代の人々が使っていた実物なので、当時の稲作の様子や生活ぶりがリアリティをもって蘇ってきます。

▼静岡市立登呂博物館
https://www.shizuoka-toromuseum.jp/

 

②鹿児島県 上野原縄文の森展示館

上野原縄文の森展示館

鹿児島県上野原縄文の森展示館は西日本の縄文遺跡を代表する鹿児島県の上野原遺跡にある博物館です。上野原遺跡は西日本でも縄文文化が栄えていたと認識されるきっかけとなった遺跡です。

常設展示では上野原遺跡で出土した重要文化財を中心に、鹿児島県内の各地からみつかった土器や石器などの遺物が展示されていますが、登呂博物館と同様に大変美しい展示が展開されます。

とくに弥生時代の壺形土器によく似た縄文時代早期(約7,500年前)の2つの土器(双子壺と呼ばれています)がガラスケースに収められた様は感動ものです。

同じ敷地内に鹿児島県立埋蔵文化財センターが併設されていて、出土物の整理作業の様子や収蔵庫なども公開されているので、合わせて見学することをおススメします。

▼鹿児島県 上野原縄文の森展示館
https://www.jomon-no-mori.jp/

 

③宮崎県立 西都原考古博物館

西都原考古博物館

宮崎県立西都原考古博物館は日本最大級の古墳群である西都原古墳群の中にあり、主に日向や南九州の古代史を学ぶことができる博物館です。

常設展示室は、豊富な展示資料と充実した解説に加えて、映像、音響、照明などを駆使して五感にも訴える見事な展示が繰り広げられます。

また、この常設展示室からガラス窓を隔てた隣にある収蔵室に納められた古墳時代の人骨や鉄製品などの資料も見学することができます。

常に新しい情報を提供するという意味から「常新展示」をキーワードに、来館者自らが主体的に学ぶことをコンセプトに設計されているとのことですが、まさにそれが実現できている博物館と言えます。

▼宮崎県立 西都原考古博物館
https://saito-muse.pref.miyazaki.jp/web/index.html

 

④島根県立古代出雲歴史博物館

古代出雲歴史博物館7

島根県立古代出雲歴史博物館は出雲大社の隣にあり、古代の出雲を学ぶことができる博物館で、特徴はテーマ別展示と通史型展示をミックスした展示スタイルになっていることです。

テーマ別展示では「青銅器」「出雲大社」「出雲国風土記」の3つのテーマごとに展示が構成されていますが、最大の見せ場は何といっても青銅器の展示です。

荒神谷遺跡から出た358本もの銅剣、加茂岩倉遺跡から出た39個の銅鐸、神原神社古墳で見つかった景初3年銘の入った三角縁神獣鏡、いずれも実物が展示される様は圧巻です。

出雲大社の展示では巨大な出雲大社の社殿を復元した5つの縮小模型が展示されていますが、専門家による復元パターンが5つもあるところが興味深いです。

▼島根県立古代出雲歴史博物館
https://www.izm.ed.jp/

 

⑤大阪府立近つ飛鳥博物館

近つ飛鳥博物館

大阪府立近つ飛鳥博物館は難波と大和飛鳥を結ぶ古代の官道、竹内街道が近くを通る大阪府南河内郡にある博物館です。

このあたりは『古事記』にも記載がある通り、大和の飛鳥(遠つ飛鳥)に対して「近つ飛鳥」と呼ばれる地域で、敏達・用明・推古・孝徳の各天皇や聖徳太子の陵墓が集まっています。

日本が古墳時代から飛鳥時代を経て律令国家へと歩みを進めたときの状況を様々な展示資料をもとに学ぶことができます。

展示室の中央には古墳時代を象徴する資料として、仁徳天皇陵とされる大仙古墳の巨大な模型が展示されています。

▼大阪府立近つ飛鳥博物館
http://www.chikatsu-asuka.jp/

 

⑥埼玉県立さきたま史跡の博物館

さきたま史跡の博物館

埼玉県立さきたま史跡の博物館は埼玉県行田市の埼玉(さきたま)古墳群の中にあり、埼玉古墳群からの出土物を中心に展示が構成される博物館です。

ここの目玉は何といっても国宝展示室に展示される稲荷山古墳出土の115文字の銘が刻まれた金錯銘鉄剣です。

5世紀末の古代国家成立の謎を解くための超一級資料とされ、丁寧な保存処理が施された実物が展示されています。

この鉄剣のほか、稲荷山古墳から出土したヒスイの勾玉や鏡などの副葬品は一括で国宝に指定され、国宝展示室にて観ることができます。

埼玉古墳群は令和初の特別史跡に指定され、一帯はさきたま古墳公園として整備されています。

▼埼玉県立さきたま史跡の博物館
https://sakitama-muse.spec.ed.jp/

 

⑦福岡市博物館

福岡市博物館

福岡市博物館は福岡市早良区にあって、アジア各地との交流によって形成された地域の歴史や人々の暮らしを紹介する博物館です。

古代から近代までの資料が通史型で展示されていて、そのうち古代の展示は全体の3分の1程度です。

その中でも見逃せないのが「漢倭奴国王」の金印で、ここでは正真正銘、実物の金印を観ることができるのです。

ほかにも吉武高木遺跡から出た最古の三種の神器とされる勾玉・銅鏡・銅剣のセットなど、奴国の成立に関わる一級の考古資料が展示されています。

▼福岡市博物館
http://museum.city.fukuoka.jp/

 

⑧大阪歴史博物館

大阪歴史博物館

大阪歴史博物館は上町台地の北端に建つ大阪城のすぐ近くにあり、主に大阪市内の歴史を学ぶことができる博物館です。

大阪城の南に広がる難波宮跡を見渡すことできる10階が古代史フロアになっていて、その難波宮に関する展示の充実ぶりは特筆ものです。

河内潟が広がっていた古代の大阪市は縄文・弥生の遺跡が少ないものの、古墳時代以降の繁栄は論を待たず、その象徴ともいえる難波宮を学ぶ格好の博物館と言えます。

▼大阪歴史博物館
http://www.mus-his.city.osaka.jp/

 

⑨東京国立博物館

東京国立博物館

東京都の上野公園内にある東京国立博物館は施設や所蔵する資料など、どれをとっても全国屈指の規模を誇る博物館の元締めのような存在です。

古代史に関しては、全国各地から見つかった多数の考古資料が「平成館」にまとめて展示されており、すべてが実物というわけではないですが、教科書で見たものをたくさん観ることができます。

平成館の常設展示は通史型とテーマ型の両面で日本の古代を総合的に学ぶことができる上に、特別展示も計画的に開催され、全国各地、ときには世界の貴重な資料が展示されることもあります。

▼東京国立博物館
https://www.tnm.jp/

 

⑩福井県年縞博物館

福井県年縞博物館は福井県の三方五湖の近く、有名な縄文遺跡である鳥浜貝塚からもすぐ近くのところにあり、ここまで紹介した歴史博物館とは少し趣を異にします。

ここでは三方五湖のひとつ、水月湖の湖底からさらに45mの深さにわたる地層を取り出した7万年分の年縞がステンドグラス上に加工されて展示されています。

年縞とは長い年月の間に湖沼などに堆積した層が描く特徴的な縞模様の湖底堆積物のことで、1年に1層形成されることから、考古学や地質学における「年代のものさし」として活用されます。

中でも水月湖の年縞はその精度が飛躍的に高いことから「世界標準のものさし」と言われています。

2021年には、博物館の振興に大きく貢献し、他の博物館の模範となる顕著な成果を挙げていると認められた施設に贈られる「日本博物館協会賞」を、全国に5,700余りある博物館・美術館の中から唯一の施設として受賞しています。

▼福井県年縞博物館
http://varve-museum.pref.fukui.lg.jp/

 

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