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古代史の学びを形に残すことのススメ その3

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第2ステップ「検証と練り上げ」

前回は、本を出すという目標を定めたこと、そのためにテーマを決めて様々な情報を集めたこと、それらの情報をもとに妄想を具体化して仮説を構築したこと、などを書きました。

古代史の学びを形に残すことのススメ その2

 

今回はその次のステップ、「検証と練り上げ(実地踏査などを通じて仮説を検証し、練り上げて自説に仕上げる)」です。

 

仮説の検証

実はこの段階では、実質的に本の原稿のもとになる文章を書き始めることになっていました。

第1ステップで“仮説のパーツができあがっていき、それをパズル感覚で組み合わせていく”と書きましたが、結果的にそれは文章をつないでいくことになるので、接続詞が適切でなく、表現方法も統一されず、話に流れが無くて断片的、誤字脱字もいっぱい、というような状態であるものの、それらしい文章ができあがっていきます。

 

まだまだ他人様に読んでもらえるような代物ではないのですが、自分の考えていることが形になっていく楽しさがありました。

 

『魏志倭人伝』や邪馬台国のことを文章に書いていると、事実や専門家の説による裏付けが欲しい、仮説を補強するネタが欲しい、と思える箇所が次々と出てくるので、また本を買ってネットで調べて、さらに詳しく勉強しました。

 

たとえば、古代の製鉄はいつから始まったのか、どの地域で行われていたのか、どんな製法が用いられたのかなどについて詳しく調べました。

日本では製鉄が始まった時期は公式には5~6世紀とされていますが、各地の遺跡から出る製鉄関係の遺物は弥生時代から製鉄が行われていたことを物語っています。

しかも九州南部においても製鉄の痕跡が確認されています。

 

この点は私の仮説における重要なポイントになりました。

 

また、古代の造船技術や航海技術について詳しく調べたり、各地の遺跡についても調査報告書をダウンロードして読み込んだりしました。

どれもが自分の考えが妥当であることを裏付ける資料になりました。

 

『日本書紀』を読み進めて仮説に基づいて解釈していくという作業も進めていきました。

ちなみに私が使用した題材は講談社学術文庫の「日本書紀(上)全現代語訳 」です。

行レベルで順番に解釈していくというのではなく、天地開闢、神々の誕生、国生み、天照大神、素戔男尊、葦原中国平定、国譲り、天孫降臨、山幸彦海幸彦、神武東征、というような大きなくくりで考えていきました。

 

このときに特に重要だと認識したのは神社に関する情報です。

 

神社やそこに祀られる祭神の存在は記紀神話を読み解く際の必須で最重要なネタであり、極論すれば、神社や祭神が神話解読の最大の根拠になり得るということを知りました。

しかし一方で、そこに寄り掛かりすぎるのは危険であるとも思いました。

 

その神社がいつ創建されたのか、その祭神が祀られるようになったのはいつのことか、なども調べた上で使用しなければいけません。

 

さて、こういう作業と並行して、各地の遺跡や神社へ出かける機会をできるだけ作るようにしました。

これも小さな成功体験で学んだことで、現地へ行って古代人になったつもりで五感で感じることが仮説を検証することにつながるからです。

 

実は、当時私が勤めていた会社は全国各地に支店を持っていて、とくに九州では佐賀を除く全県に支店がありました。

1年に一度、全国の支店を巡回する仕事があって、その出張の機会を利用して各地の遺跡や神社を訪ね歩き、そこで見たこと、聞いたこと、感じたことなどは仮説にリアリティをもたらしてくれました。

 

 

余談になりますが、実地踏査の際にはできるだけ博物館や資料館なども見学するようにしているのですが、福岡の板付遺跡に併設する資料館(板付遺跡弥生館)へ行ったときに、学芸員の方の親切な対応に感激したことがきっかけで学芸員という仕事に興味を持ち、翌年に通信制大学に入学して資格を取得することになりました。

 

仮説の練り上げ

妄想から仮説を導き、その仮説を事実や専門家の説で、あるいは実地踏査によって検証をしたことで自分としてはそこそこ説得力のあるものに仕上がってきたと自己満足に浸りました。

 

『魏志倭人伝』に書かれた邪馬台国の所在地については、結論だけみればありふれた答になっていますが、その解読プロセスにおいては自分流にできたと密かに自負しており、ここまでやればこれはもう仮説ではなく自説と呼んでもいいのではないか、とすら思っています。

もちろん、素人考えなので反論されればメッタ撃ちにされると思いますが。

 

『日本書紀』の解読でも、大陸とのつながりや『魏志倭人伝』との整合を考えながら日本の歴史の始まりを考えるオリジナルな解釈を試みました。

これはおそらくトンデモ説の類になるのでしょうが、素人の楽しみ方としてはそれでよいのだと思っています。

 

冒頭で書いたように、すでに本の原稿のもとになる文章を書き始めていましたが、いよいよ第三者に読まれることを意識して文章を整えていくことになります。

 

参考となる図表を出典を示しながら挿入したり、場合によっては自分で図を作成することもやりました。

 

原稿のボリュームは最大で300ページ、文字数にして12万文字を目標にして書き進めていったのですが、自分で書いた文字数が増えていくにつれて早く誰かに読んでもらいたいという気持ちがどんどん強くなっていきました。

 

そこで、年内に本を出すという目標はそのままにして、まずはブログでの発信を先行して開始することにしました。

 

次回はいよいよ、自分で勉強して考えた成果を第三者に発信するという最後のステップに話を進めたいと思います。

 

(次回に続く)