はじめに
古代史を学ぶことが生きがいになりつつある私(ひろ)が、これまでの古代史旅の経験をもとにお届けする今回のテーマは「Deepな出雲」です。
『古事記』全3巻のうち、上巻の1/3を占める出雲神話の舞台には、出雲大社をはじめとする有名な神社や、荒神谷遺跡などの重要な遺跡がたくさんあります。
これまでの出雲旅で有名どころは行き尽くしたと言うあなた、3回目、4回目ともなると行き先も悩んでしまいますよね。
そんなあなたに次の3つの行き先を提案します。
【A】ぜったいポイント | 島根県立古代出雲歴史博物館 |
【B】マニアックポイント | 神魂神社 |
【C】せっかくポイント | 菅谷たたら山内 |
【A】ぜったいポイント「島根県立古代出雲歴史博物館」
この博物館は出雲大社の隣にあるので行かれた方も多いと思いますが、まだ行かれていない方には必ず行ってもらいたいところです。
古代出雲歴史博物館を観ずして出雲を見たというなかれ。そういう意味で取り上げました。
見どころ満載の博物館ですが、中でも次の展示は必見です。
②出雲大社巨大神殿の復元模型5基
③荒神谷遺跡出土の銅剣358本・銅矛16本・銅鐸6個
④加茂岩倉遺跡出土の銅鐸39個
⑤神原神社古墳出土の景初三年銘の三角縁神獣鏡
古代の出雲大社本殿は高さが16丈(48m)もあり、3本の大木を鉄輪で束ねた柱9本によって支えられていたことが鎌倉時代の資料等によって確認されていましたが、本殿前の発掘調査によってそれが証明されました。
その物的証拠となるものが①(宇豆柱)です。
そしてそのときの調査結果をもとに5名の建築の専門家が本殿の復元を試みた結果が②(出雲大社巨大神殿の復元模型5基)です。
いずれも壮大な古代出雲大社が目に浮かんできます。
③(荒神谷遺跡出土の銅剣・銅矛・銅鐸)、④(加茂岩倉遺跡出土の銅鐸)、⑤(神原神社古墳出土の三角縁神獣鏡)は古代出雲を語るときに欠かせない重要な遺跡からの出土物で、特に358本の銅剣や39個もの銅鐸が並ぶ姿は圧巻です。
いずれの展示資料も実物であることが最大のポイントで、リアリティをもって古代出雲を感じることができる超一級の資料です。
博物館は知識や知見の深まりに応じた気づきや発見があるので、初めての方のみならず、二度目、三度目であっても行かれることをおススメします。
【B】マニアックポイント「神魂神社」
カモス神社と読みます。
島根県松江市にある意宇六社の一社で、祭神は伊弉冊大神と伊弉諾大神。
社伝によると「出雲国造の大祖天穂日命がこの地に天降られ出雲の守護神として創建、以来天穂日命の子孫が出雲国造として25代まで奉仕され」とあり、出雲国造が出雲大社に移るまで仕えていた神社です。
近くには出雲国府跡があり、このあたりは古代出雲の中心地であったと言えるでしょう。
本殿の建築様式は大社造りで、伊勢神宮に代表される神明造りや住吉大社に代表される住吉造りとともに、最も古い神社建築様式とされますが、その大社造りの代表である出雲大社の現在の本殿が1744年の再建であるのに対して、この神魂神社本殿は1346年の建立とされ、現存する日本最古の大社造りとして国宝に指定されています。
本殿が国宝に指定されている神社は全国に26社しかないのですが、その意味でも大変貴重な神社と言えます。
同じく国宝に指定されている出雲大社本殿はあまりに大きく、四方を板塀(瑞垣)が取り囲んでいるため、大社造りの社殿を実感することができないのですが、この神魂神社はそれほど広くない境内にまるで衆人環視の丸裸状態で建っているため、建築様式をじっくりと観察することができます。
神社建築に興味のある方には必見の神社と言えます。
【C】せっかくポイント「菅谷たたら山内」
出雲と言えばたたら製鉄。
奥出雲一帯では、中国山地で採取される砂鉄と木炭を原料に古代から鉄作りが行われてきました。
古代・中世には露天で自然の風を利用する「野だたら」と呼ばれる方式が行われていましたが、近世になると「高殿(たかどの)」と呼ばれる建物の中に炉を設けて行う「永代たたら」に移行しました。
これによって製鉄に従事する人々が高殿周辺に定住するようになり、その地区を「山内(さんない)」と呼ぶようになりました。
この菅谷たたら山内は大正10年(1921年)まで操業していた菅谷高殿のほか、たたら製鉄関連の施設が保存され、かつての製鉄従事者が暮らした山内も現存しています。
国内で唯一現存する高殿である菅谷高殿では、高殿の構造やたたら製鉄の仕組みなどの解説を聴きながら、製鉄炉などの屋内にある設備を見学することができるので、すぐ近くにある「元小屋」で申し込みをしてください。

また近くには山内生活伝承館や鉄の歴史博物館など、たたら製鉄に関する展示施設があります。
山内生活伝承館では山内で暮らした人々の生活の様子を、鉄の歴史博物館ではたたら製鉄の歴史や技法、プロセスなどを学ぶことができます。
このように菅谷たたら山内は、出雲におけるたたら製鉄の全てを学ぶことができる大変お得なスポットと言えます。
出雲市内から車で小一時間ほどかかりますが、是非とも訪ねてみてください。
月曜日や祝日の次の日は休館日となっているので注意してくださいね。
まとめ
「Deepな出雲」と題して3か所のおすすめスポットを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
いずれも出雲ならではのスポットなので是非とも訪ねていただきたいと思います。
それにしても出雲は難解です。
古代出雲をどのように捉えるか、どのように位置づけるか、1回行ったくらいでは何の答えも出ませんね。
2回、3回と何度も足を運んでいるうちにだんだんと輪郭が見えてくるような気がします。
あなたの出雲旅が有意義なものになることを祈っております。