自費出版で発生するトラブルとしてどんなことが考えられるのか、事前に知っておきたい人向けの記事です。
自費出版で本を作りたいと考えているあなたは、おそらくWebで自費出版サービスを提供する事業者を検索することと思いますが、多くの人がその検索結果を見て驚くことでしょう。
自費出版サービスをやっている事業者がこんなにたくさんあるのか、と。
そして、どれを見ても簡単に本が作れそうと思ってしまいます。
あなたはこれから、そんなたくさんの中から事業者を選んで本作りを進めることになるのですが、ほとんどの場合、ものごとが順調に進んで出来上がった本を手にすることができるでしょう。
しかし一方で、思っていたイメージと違う本が仕上がってきた、こんなにコストがかかるとは思っていなかった、というように、想定しなかった事態に陥ることも考えられます。
自費出版サービスを利用するときにどこにどんなリスクが潜んでいるのでしょうか。
自費出版2つの分類
自費出版は大きく分類すると個人出版と共同出版に分けることができます。
個人出版とは?
個人出版は出版社を通じた市場での販売を考えず、出来上がった本を全て買い取るケースです。
この場合、基本的な作業は全てあなた自身が担い、事業者は印刷や製本をするだけなので、事業者が提供するサービス内容を理解した上で、それ以上のことは基本的に自己責任と割り切ることができるでしょう。
共同出版とは?
一方、あなたと事業者とで役割分担を決めて、それに応じたコスト負担が発生するのが共同出版です。
双方の取り決め(契約)の内容や確認不足が原因となってトラブルに発展することが考えられます。
自費出版のリスク
以下に、工程ごとに考えられるリスクを挙げてみましょう。
①契約時
事業者が決まればメールなどで連絡を取って、相談・見積・契約と進めていくわけですが、この過程が最も重要なポイントとなります。
たとえば、標準サービスの内容を上回る作業はすべてオプションサービスとして追加コストになるのが一般的ですが、「自分だけの本なのでできるだけいいものにしたい」という思いが強すぎるとコストがどんどん膨らむことになります。
もしもあなたが2作目の出版を考えているのであれば、初めての場合は標準サービスの範囲に抑えておいて、2作目で冒険するという考え方もアリではないでしょうか。
コストのことに限らず、不明な点や理解できない点があれば契約を結ぶ前に必ず確認を取るようにしましょう。
自費出版に限らず、一般的に契約書というのは相手にとって有利な内容になっていることを心得ておいてください。
②編集工程
事業者によっては担当編集者をつけてくれる場合があります。
もちろん、料金にその分のコストが乗っているのですが、編集者があなたの工数を肩代わりしてくれるだけでなく、専門家の視点であなたの出版をサポートしてくれるので大きなメリットがあります。
ただし、どんな本を作りたいのか、あなたの意向を編集者にしっかりと伝えるようにしてください。
ここでの行き違いや勘違いが自分の意図したものと違う出来上がりになる原因となります。
たとえば、編集者の意向で原稿が大幅に削られたり、意図とは違う校正原稿が上がってきたりすることがあります。
③製本工程
原稿の編集や校正がすべて終わると、装飾部分を作る製本工程に入ります。
書籍の印象を決定づけると言っても過言ではない工程です。
カバー、表紙、見返し、扉、帯など本の意匠にあたる装丁を決める工程にも編集者が関与してくれるのであれば、ここでもしっかりコミュニケーションを図ることが大事です。
装丁の出来栄えが本を手に取った時の感動を左右します。
④流通販売工程
自費出版では、特に流通・販売でトラブルが発生するケースが多いようです。
小さな出版社の場合、配本できる書店の規模や地域に偏りがあるなど、販売力が不足することは否めないでしょう。
このあたりは大手の出版社の場合は問題ないと思われますが、その分、コストが高くつくかもわかりません。
市場での販売を考えるのであれば、契約時にそのあたりを確認しておくことが必要となります。
また、事業者によっては広告宣伝など追加のプラン(もちろんコストオンです)を提案してくれるところもあるでしょうが、ここはひとつ、冷静になって考えることが重要ではないでしょうか。
「世の中の知らない人が本当に自分の本を買ってくれるのだろうか?」
自費出版サービスも信頼関係が大事
ここでは想定されるリスクの中でも典型的なものを挙げてみましたが、結局のところ、自費出版サービスを提供する事業者と信頼関係を築くことができるか、というのが最大のポイントではないでしょうか。
不信感を持ちながら作業を進めてみてもお互いにいい仕事ができるとは思えないですし、本が出来上がっても嬉しさは半減ではないでしょうか。
ここまでやってくれるだろう、やってほしいな、これくらいやってくれてもいいのに、どうしてこれができないのか、なんて思いながら進めるとロクなことにならないと思います。
事業者側はボランティアではなくビジネスとしてやっているので、契約に謳われていること、サービスとして定義していること、これはきちんとやってくれますが、逆にそれ以上のこと、それ以外のことはやってくれないと割り切っておくべきですね。